正社員として雇用した従業員がミスばかりしています。 同僚・上司が指導しても、全く改善されません。解雇したいのですが、どうしたらいいでしょうか?

2012/10/05 その他の取り扱い分野 by admin

特集法律相談例労働問題の法律相談例

正社員として雇用した従業員がミスばかりしています。
同僚・上司が指導しても、全く改善されません。
履歴書には当該職種について経験ありと記載されており、採用面接のときに本人も出来ると話していましたが、本当かどうか疑わしいほどに仕事ができません。
解雇したいのですが、どうしたらいいでしょうか?
従業員の能力不足を理由とする解雇の問題ですね。面接での自信満々な態度を見て、即戦力を期待して雇ってはみたものの、思うような働きを全くしてくれない「有言不実行」従業員や、日常の業務で単純なミスを繰り返すが、全く反省しないあるいは改善しないような「困ったチャン」従業員に悩まされている経営者の方々は多いかと思います。
しかしながら、日本の法律や判例では、欧米に比較し、労働者の身分が強く守られており、解雇そのものが非常にハードルの高く、リスクを伴うものになっています。そのため、安易に解雇してしまうと、訴訟や労働審判を起こされて、多額の金銭を支払うことになってしまったり、場合によっては大きな労使紛争に発展し、会社の経営に重大な支障が出るような事態なったりするおそれもあります。
日本の法律や判例では、解雇が客観的に合理的な理由に基づいており、かつ社会通念上相当であることが必要とされ(労働契約法16条)、このような条件を満たさない解雇は、解雇権濫用として無効になってしまいます(解雇権濫用法理)。そして、能力不足を理由とする解雇の場合、①能力不足の程度、②教育、訓練、配置転換等の改善の機会があったかという2つの要素により、解雇権の濫用といえるかが判断されることになります。
①能力不足の程度については、成績不良や人事考課の評価が低いという程度の能力不足では足らず、著しい能力不足が必要とされています。どの程度であれば著しい能力不足といえるのかはケース・バイ・ケースですが、判例の中には、相対評価の考課順位が下位10%未満であっても能力不足とはいえないと判断したものもありますし、単なる成績不良ではなく、企業経営や運営に現に支障・損害を生じまたは重大な損害を生じるおそれがあることを要すると判断したものもあるので、相当ひどい能力不足の場合でなければ、解雇が無効と判断されるおそれが高いといえます。
たとえ、従業員の能力不足が著しいとしても、解雇により職を失ってしまう従業員の不利益が大きいので、即解雇が認められるわけではありません。会社としては、従業員に対し、十分に教育や研修を行ったり、注意や指導をしたり、配置転換をしたりして、従業員の改善を促したり、能力を向上させる機会を十分に与える必要があります。そこで、②教育、訓練、配置転換等の改善の機会を十分に与えることも、解雇が無効とされないために必要となります。
以上から、ご質問の従業員を解雇できるかどうかは、まずその従業員のミスの程度・頻度がどの程度のものか(①)が重要になってきます。また、その従業員に対して、教育・研修や注意・指導、配置転換等改善の機会を与えたのかどうか(②)も非常に重要です。
そして、その従業員から解雇の有効性を争われたときに備え、日常から、これらの従業員のミス及び改善の機会を十分に与えたことを、証拠としてしっかり残しておくことも大切になってきます。
このような微妙かつ専門的な判断が必要にもかかわらず、多くの使用者は、解雇を安易に考え過ぎる傾向にあります。そのため、従業員から法的手段を採られときには「後の祭り」となってしまっていることも往々にしてあります。
そこで、従業員の解雇を考えられている使用者の方々は、何か行動を起こす前に、まずは弁護士にご相談下さい。

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